【JR芦屋駅南地区再開発】議会最終日に二度目の再議へ
12月18日(金)に、12月議会(定例会)が最終日を迎えました。通常の本会議最終日は半日程度で閉会となる事が多いのですが、丸一日かかりました。争点はやはり「JR芦屋駅南地区再開発事業」でした。長い、長い、一日でした。
再開発事業に関する補正予算は否決され、事業は再び「宙に浮いた状態」です。
当日までの流れを簡単に説明します。
11月26日(木)
JR芦屋駅南地区再開発事業調査特別委員会(川島議員が出席)に、市当局から再開発事業の事業費を約34億円縮減したプラン(図参照)が示されました。
<事業費縮減の主なもの>
・ペデストリアンデッキの規模を見直して ▲5.6億円
・公益施設の規模を見直して ▲10.3億円
・地下駐輪場の台数を見直して ▲6.3億円
・再開発ビルの仕様を一部見直して ▲1.2億円
・敷地周辺の無電柱化を取りやめて ▲3.7億円
・用地の補償費を再算定して ▲7.8億円
また、他の事業手法の特徴、それぞれ費用はどのくらいかかるのかが示され、当局が再開発事業を選んだ理由がより明らかになりました。
ペデストリアンデッキの規模縮小などの事業費縮減と、住民の理解を得るための手法の比較は、日本共産党としても求めてきたものであり、評価をしました。
12月11日(金)
市当局が建設公営企業特別委員会(平野議員が出席)に、この縮減プランを前提とした補正予算案7.7億円を提出しました。
しかし突然、委員の寺前たかふみ議員(無所属)、川上あさえ議員(自民)が予算に対し「修正案」を提出。中身は、都市計画決定を一旦白紙にして、道路の拡幅を行う「街路事業」を軸に再検討せよというもの。
私たち日本共産党は、このタイミングでの事業手法の変更は実現性が乏しく、今後この駅南地区で、新たな事業が行えない可能性があると考え反対しました(賛成多数で可決)。
なぜ修正案に反対?その1 事業費の削減にはつながらない
再開発を前提に事業を進めてきたことから、下記の費用を芦屋市が負担する可能性があります(具体的に億単位の金額も示されましたが、さらに訴訟となれば金額は膨れ上がる可能性があります)。
・すでに使ってしまった国庫補助金等の返還
・JR芦屋駅の改修工事に充てる予定の国庫補助金相当や与える損害の補償
・長年にわたり都市計画決定によって土地利用に制限を受けていた地権者への補償
・すでに土地を市に売却して引っ越してしまった方への賠償
また、道路を拡げる「街路事業」にしても、今からの都市計画の変更はハードルが高いことは明白です。仮に何年もかけて変更できたとしても、国庫補助金が使える「補助事業」として採択されるかは分かりません。市単独(芦屋市の負担だけ)で事業を行うとすれば、約86億円かかると試算されています。よって、必ずしも街路事業が安くなるとは言えない状況に来ています。
なぜ修正案に反対?その2 交通課題の解決が遠のく
少子高齢化・人口減少社会は確実に訪れています。だからと言って、交通結節点である芦屋駅南地区の交通量が減少するなど、交通課題が解決する訳ではありません。むしろ高齢者の割合が増え、より安心・安全な駅前が求められます。
この場所では、横断歩道以外の場所を渡る「乱横断」が毎日発生しています。ペデストリアンデッキ等を利用した歩車分離による課題解決は有効です。この「乱横断」は修正案提案者の示す「道路拡幅」だけでは解決できません。
※実際に歩行者の交通事故は「道路横断中」が73%、その内訳は横断歩道で22%、横断歩道以外の場所で51%であると示されました。
なぜ修正案に反対?その3 芦屋市の多方面への「信頼」が失われる
この事業にすでに、国、県、民間企業など、多くの方すでに関わられています。何より、地権者との関係があります。行政と地権者は平成10年から約20年間に渡って話し合いを続けています。
「まちづくりはひとづくり」と言われています。
地権者の皆さんは、同じ駅南地区にお住まいであっても、同じ条件で暮らしている方はいません。「交通課題の解決」のという大きな目標があったとしても、簡単に市の提案に応じられるものではなかったでしょう。こうした中で、担当者が何度も地権者の元に足を運んで説明し、協力して下さる人を少しずつ増やしていく、信頼関係を作り上げていく事こそ、本当の「まちづくり」だったと思います。
この信頼関係を、市民の代表であるはずの議会が主導となって「無」にしてしまうことは、少なくとも私たち会派には考えられません。
何より、再開発事業を前提とする事業費縮減は、全ての会派・議員が求めてきた事です。34億円の縮減プランを検討させておきながら、このタイミングで議会が事業手法を覆す事に道理は無く、市民の理解は得られません。
12月18日(金)
本会議で予算の「修正案」に賛成多数で可決(賛成11、反対9。共産党は反対)。原案否決。市長から即日「再議」が求められました。
再議(※1)では、修正案は賛成が2/3を超えず否決されましたが、原案(※2)も否決されました。昨年3月と同様に、事業は宙に浮いた状態です。
同日夕方、市長が記者会見し、人件費などの予算を専決処分(※3)して再開発事業をつないでいくことを表明しました。
※1 この場合、修正案が通るためには出席議員の2/3以上の賛成が必要(地方自治法第176条)。
※2 当局が当初議会に提出していた予算案。改めて過半数の賛成が必要。
※3 諸事情から市長が議会の議決を待たずに処理する事。その後、議会への承認を求める(地方自治法179条)。
図 11月26日の委員会で示された事業費縮減プラン
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